明治大学和泉キャンパス
第二校舎

日本におけるDOCOMOMO100選

所在地 東京都杉並区永福
竣工 1960年(昭和35年)
設計 堀口捨己



明治大学和泉キャンパスでは、文系の1,2年生の学生と
いわゆる「和泉返し」をくらった一部の先輩方が学んでいます。
西洋史を学ぶ僕もそのひとり・・・

その和泉キャンパスのなかに
ひときわ異様な校舎が立っています。





明治大学和泉キャンパス 第二校舎



一見したところ、これといった装飾もない
サッパリとしたモダニズムの建物です。
柱や窓のデザインには日本的な要素も感じられます。
ジャパニーズ・モダンといったところでしょうか。
丁寧な仕事が感じられる作品です。





しかし、何より目を引くのが
建物の外壁をクネクネとに走るスロープです。
何本もの緩やかな傾斜のスロープが
建物の周りにまとわりついているようです。
ビシッとしたモダニズムの建物なのに
どこか楽しい遊び心あふれる雰囲気を持っています。





このスロープ
校舎の東西南北の外壁を囲んでいて
さらに一部は校舎の中にまで入り込んでいます。
そしてすべてのスロープがつながっていて
どの階のどの教室にもこのスロープで移動することができます。
もちろん建物の中にもちゃんと階段があって
それで各教室に行くこともできます。
では、なぜわざわざこんなスロープが付いているのでしょうか・・・



   

理由はこの第二校舎の教室にあります。
第二校舎は8つの階段状の大教室で構成されています。
教室はいずれも定員300名〜500名もある大きなものです。
このような大教室という性質上、授業が終わると一度にたくさんの人が移動します。
多くの人をより安全に、かつ効率的にさばくには
このようなスロープがベストなのです。
階段だと、一度にたくさんの人が集まると危ないですからね。
この建物、効率的な人間の流れが非常によく考えられています。
(一方で学生には道に迷うと評判ですが・・・)

さらに、外のスロープの傾斜はその奥の教室の床の傾斜角度と一致していて
教室の床がそのまま外に延びたような感じになっています。
わざわざ水平な廊下を作るより安上がりで、工費の節約にもなっています。



この第二校舎をはじめ
今日の和泉キャンパス・生田キャンパスの多くの建物
さらにランドスケープなどをデザインしたのが
建築家 堀口捨己(すてみ)です。
戦前から活躍したモダニズムの巨匠で
和風建築とモダニズムを融合させた独特の作風で知られた人です。
建築設計に限らず、茶室や日本庭園、建築史の研究でも活躍し
さらに歌人としても知られた人です。
そして、明治大学の教授でもあり、工学部長も務めました。
今でも明大建築学科の卒業設計最優秀賞「堀口捨己賞」にその名を残します。



   

   

和風建築の巨匠としても知られたステミ先生ですが
この第二校舎でも各所に日本的な要素を見出すことができます。
障子をイメージしたドア、木賊(とくさ)色・桜色・露草色の手すり
そして木造建築のような柱と梁の力強い構造など・・・
モダニズムと日本の伝統が、破綻なく融合しています。
そして、白い校舎にアクセントの色が優しく映えます。
校舎はまさに真っ白なカンバス、そしてそれに映える色たち・・・
全体が一枚の構成主義の絵画のようです。





この和泉キャンパスの第二校舎は
ステミ先生が工学部長在任中に設計した校舎のひとつです。
他にも在任中に多くの校舎を設計し
今日の和泉・生田キャンパスの基礎を確立しました。



現在、この第二校舎は
「日本におけるDOCOMOMO100選」に登録されています。
DOCOMOMOとは、フランスに本部を構える
世界の近代建築の記録・保存を目的とする国際組織で
日本では現在100件の建築が、DOCOMOMO Japanによって
日本を代表する近代建築として登録されています。
この第二校舎も、その100件の中のひとつなのです。
ちなみにステミ先生の作品では、この第二校舎のほかに
代表作といわれる「八勝館 みゆきの間」がDOCOMOMO100選に登録されています。





摩訶不思議な用即美のデザイン
そしてモダニズムと日本の伝統の融合
明治大学和泉キャンパス 第二校舎でした。



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2008.4.20

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