カクニ第2ビル
| 所在地 | 東京都立川市曙町 |
| 竣工 | 1979年（昭和54年） |
| 設計 | 不詳 |
管理人、現在大学2年生なわけですが（2008年度現在）
「人文地理学概論」という授業の冬休みのレポートに
「身近な都市の景観について調べよ」みたいなのが出まして･･･
とりあえず高校時代に3年間通った立川でも取り上げるかーと思って
使い込んだデジカメ片手に立川ブラブラしておりまして。
「そういえば大学生になってからここら辺来てなかったなー」という感じで
かつての通学路を歩いていたら･･･
ずっと忘れていた懐かしい奴との再会が･･･
あれっ、おまえ･･･
おまえカクニじゃないかー!! なつかしー!!
こいつの名前はカクニ第2ビル
カクニと言っても豚の角煮とは何の関係もありません。
中に入ってる会社の屋号です（四角の中に「ニ」で「カクニ」）
某都立KTTM高校の通学路の途中にあるこのビル
管理人が高校時代、毎日こいつの横を通っていました。
当時から何か、妙に気になる存在だったんですよね〜こいつ。
とはいっても、いわゆる有名作品の類ではなく
まったく無名な単なる雑居ビルです。
大きな交差点に向かって一人突っ立っているこのカクニ君
妙にヌメーッとした姿が印象的なビルですが･･･
単刀直入に表現すると
流線形にしようとして失敗したような絶妙な曲線を描いています。
だってね〜 この「手描き」のような妙な曲線･･･
「美しい曲線」っていうのとはちょっと違いますよね･･･
ヘタウマの世界というか何というか･･･
しかも壁には太字でインパクト満点の「カクニ第2ビル」ですよ。
そしてこの薄緑と灰色という妙なカラーリング･･･
こいつ管理人が高2ぐらいの時にイメチェンしやがって
元々全体がきれいな瑠璃色のタイル張りで
ちょっとアンティークな雰囲気が素敵なやつだったんですが
何があったのか全面改装で円筒部分が「薄緑」（×黄緑）
それ以外が灰色という妙なツートーンカラーになってしまいました･･･
シュールさ激増･･･ 丸い形と相まってまるで●チャピン･･･
側面部分はやはり流線形を意識したような水平連窓になっています。
この水平に連続した窓というのはモダニズムの重要な要素なのですが
･･･何かが惜しいんですよねー･･･メタボ気味というか･･･
あんまりスムーズに流れてない流線形というか･･･
あと一歩間違えるとカッコいいのに。
でも妙に愛らしくて、そこが憎めない･･･
ちゃんと角も曲面ガラスを使ってたりしててね。
何だか力の入れどころが少々間違っているのですが･･･
反対側から見たカクニ君。彼は三角形の敷地に立っています。
やっぱり流線形をどこかで意識しているようで
何とも煮え切らない曲線を描いて左右に流れています。
ちゃんと壁にも水平のラインがデザインされています。
でもやっぱり、ガ●ャピンに見えてしょうがない･･･
という感じで「愛すべきヘタウマ」なこのビルですが
こいつの本当の素晴らしさはビルの中にありました。
実は今回初めて中に入ってみたのですが
こいつこんなすごいのを隠してたのか･･･と思ってビックリです。
外から見たら妙な曲線ですが、同じ曲線でも中から見たら･･･
この階段室･･･この曲線使い･･･
こいつ、ただものではない。
外から見るとなんか変なのに、中から見るとえもいわれぬ曲線･･･
白い壁と繊細な手すりが絶妙なコントラストです。
ふんわりとした音楽を可視化したらこんな感じになりそう･･･
村野藤吾という建築家も美しい階段を持った作品をいくつも残しましたが
これはそれにも負けないような美しい曲線を持った階段です。
あの妙な曲線はこうなってたんですね。
「楕円」ともちょっと違う、円を引き伸ばした形･･･
階段室を下から見上げると、思わず息をのむ美しさです。
外観はこれを無理に消化しようとしたから何か変なのか･･･
でも中から見るとちょっと感動です。
非常に優美な階段です。
まさにこの階段に、このビルの造形美の頂点があるわけです。
ここのデザインにあまりにも力を入れすぎた結果
外観のデザインまで手が回らなかったのか･･･
そして階段の一番下。
絶妙な取り置きですね〜階段と自転車と小便小僧。
ん〜やっぱこのビルは謎だ･･･
でもこれだけで静物画になりそうな絶妙な組み合わせ･･･
それから壁にはこんな芸術的なモザイク画もあります。
階段室はこんなに芸術的なのに、外観はガチ●ピン･･･
もう凝ってんだか適当なんだかわかりませんね。
でも非常に心惹かれるものがあるな〜このビルは。
まさに「ヘタウマの名作」･･･
あらゆる意味でこいつはただものじゃありませんね･･･
おまえやっぱりすごいな!! いい奴だな!!
こいつがますます気に入ってしまいました。
愛すべきヘタウマの名作
カクニ第2ビルでした。
2008.12.30