国際文化会館

国登録有形文化財
第7回 日本建築学会賞
日本におけるDOCOMOMO100選

所在地 東京都港区六本木
竣工 1955年(昭和30年)
1976年(昭和51年)改修・増築
2006年(平成18年)改修・増築
設計 前川國男
坂倉準三
吉村順三





どういう順番で挙げればいいのか、ちょっと迷いましたが・・・
これほど多くの賞をとった作品も少ないと思います。
(ホントはもっとたくさんとっているのですが、とりあえず代表的なもの3つで・・・)

日本モダニズム建築史にその名を轟かす
「マスターピース」の登場です。





国際文化会館



六本木ヒルズから歩いてしばらくのところに
この名高い傑作が存在しています。
完成したのは1955年
まだ敗戦から10年しかたっていない頃にできた作品です。





「国際文化会館」という何だか抽象的な名前の施設ですが
簡単に言うと「ホテル」です。
しかし、単なるホテルではありません。

「財団法人 国際文化会館」は1952年に設立された非営利民間団体で
ロックフェラー財団など世界中の団体・個人からの援助で運営されています。
「日本と世界の人々の間の文化交流と知的協力を通じて
 国際相互理解の増進をはかること」を目的に
文化・学術・教育の分野での国際交流を実施しているそうです。
この施設は、その交流の場として建設されたもので
開館以来ネルーなど世界中の文化人・知識人が宿泊してきました。
何かとんでもなくハイソな「知識人のため施設」なのです。

ちなみに、基本的に宿泊するには「会員」になる必要があります。
国際文化会館の趣旨に賛同する人は、申し込むと
会員審査会のうえ、入会が認められるそうです。
入会申し込みには2名の現会員からの推薦が必要です。
(なんかmixiみたい・・・ちょっと違うか・・・)
会員以外の一般の人でも宿泊は可能ですが
その場合、やはり会員の同伴か紹介が必要です・・・
かなり敷居が高い感じ・・・





宿泊するのは難しいですが、見学は誰でもできます。
ちょっとドキドキですが、フロントの人に一声かけて見学しましょう。
玄関には頻繁にタクシーがやってきます。
聞こえてくるのは英語だったり日本語だったり・・・

さすがに中の写真は遠慮しました。
ロビーでは外国の方たちが新聞を読みながら歓談していました。
ネルーが宿泊した時の写真なども展示されています。
過去の主な来館者を見ると、ノーベル賞をとった人が結構多いです。





建物の中を通り抜けると
南側の庭園に出ることができます。
この場所にはかつて三菱財閥の主宰者だった
実業家 岩崎小弥太の邸宅がありましたが
戦後の財閥解体の中で土地は国有地となり
その後国際文化会館が払い下げ、今の建物が建てられました。





建物は3人の建築家の共同設計によるものです。
前川國男、坂倉準三、吉村順三
いずれも当時の日本を代表するモダニズムの巨匠です。
まさに奇跡のコラボレーション作品・・・
ベランダの「ブリーズ・ソレイユ」がル・コルビュジエ的ですが
より薄く、細く、低く、日本的な美学が追求されています。
何という緻密で繊細な造形・・・鳥肌ものです・・・

かつてこの建物には2回、解体の話が持ち上がりましたが
最初は石油ショックによる改築の資金難のおかげで
その次は建築界挙げての保存運動のおかげで
解体されずに今日まで使われています。
今では文化財としての価値も認められ、補修を繰り返しながら
大切に使われています。



   

庭園は岩崎小弥太邸時代にできたものです。
造園家 7代目小川冶兵衛による作庭で
国の名勝にも指定されている美しい庭園です。







国際的な文化交流の舞台となっている国際文化会館
世界中の人が訪れるこの建物には
日本の伝統的な美学が凝縮されています。



   

西洋の庭園と言えば・・
たとえばヴェルサイユ宮殿なんかそうですが
徹底的に「幾何学の美」を追求しています。
左右対称、直線的で明快な構成、とにかく人工的です。
「自然を支配する」という感じが明確に出たものが多いです。

一方、日本の庭園と言えば・・・
よく「借景」という言葉が表わしているように
自然を生かし、より自然な感じを目指したものが多いです。
自然に木が生えていたり、自然に川が流れていたり
自然に池があったり・・・
「自然と調和する」という考えが根底にあります。





この国際文化会館の庭園も
自然の姿を生かした日本的な庭園です。
そして建物も、その自然な庭園に溶け込むような
静かで落ち着いた、自己主張の少ないデザインになっています。
建物自体は西洋由来のモダニズム建築ですが
その精神には明らかに「日本的なもの」が宿っています。





高さを抑えた、スーッと広がる水平のライン・・・
繊細な表情のベランダ・・・
強烈な「個性の主張」はありませんが
庭園とよく調和した、美しいデザインです。
周囲との調和を重視するといわれる日本人のパーソナリティも
こういう美意識にルーツがあるのかもしれませんね。
(それがいいのか悪いのかは別として・・・)





自然な庭園と美しく調和した
ジャパニーズ・モダンのマスターピース
国際文化会館でした。



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2008.4.28

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