青梅市役所

所在地 東京都青梅市東青梅
竣工 1962年(昭和37年)
設計 不詳





え〜・・・
超地元ネタで恐縮ですが・・・
管理人が生息している「青梅市」の市役所です。はい。
青梅はですね〜 田舎ですね〜 一応東京ですが・・・
その青梅市の中でも比較的「街」っぽくなっているところに
青梅市役所が立っています。





小学校の頃から社会科見学などで
たびたびお世話になってきましたが
高校時代、建築に興味を持つようになってから
改めてよくよく見てみると・・・
「あれ、意外とカッコいいモダニズム建築じゃないの・・・」
(あぁ・・・皆さんの「えぇ〜!?」という声が聞こえてくるようですよ・・・)
毎日通学の電車の窓から眺めています。





調べてみれば、完成したのは1962年
モダニズムの黄金時代の建築ではありませんか!!
ベランダで強く水平線を強調するスタイルは
國方秀男の「NTT日比谷ビル」にも似ています。

コンクリートのブルータルな質感・・・
柱とベランダの力強いデザイン・・・
いいじゃありませんか・・・
絵に描いたような正統派モダニズム建築ですよ。
そしてこのコンクリートの朽ち果て具合が・・・
ものすごく味が出てます。



   

そしてこの窓の目隠し部分
これもコンクリートの打ちっぱなしです。
ル・コルビュジエの「ラ・トゥーレットの修道院」や
前川國男の「東京文化会館」を彷彿とさせます。
力強い躯体に繊細な雰囲気を与えています。





市役所前の歩道橋からの眺めです。
側面のごちゃごちゃした雰囲気がまた何ともいい感じで・・・
そしてコンクリートの深い質感が
この建物が過ごしてきた時間の重さを感じさせます。
でも、その歴史も間もなく終わってしまうようです・・・





もう何年も前から
この市役所は建て替えの話が出ています。
「いくらなんでもこれはボロい」というわけで
きれいな、新しい、大きな市役所に建て替えようという話です。

・・・なんですが
「このご時世に市役所を新築だなんて、税金の無駄遣いだ」との声もあり
なかなか話がまとまりませんでした。
そのおかげで、今日までこの市役所は命を永らえています。





建て替えをめぐる議論はなかなか決着がつきませんでしたが
その議論に「市役所の建築としての価値」についての話は
一切出てきませんでした。
保存の「ほ」の字も出ませんでした。

・・・そりゃそうですよね・・・
普通の人が見たら、これはただの薄汚い建物にしか見えないでしょう。
実際この市役所は何かの本に「名作」として紹介されているわけでも
何かの文化財なりDOCOMOMOに登録されているわけでもありません。
ただの古い市役所以上の何物でもありません。





でも、僕はこの市役所が大好きです。
自分の育った青梅の町が好きかと言われれば
そりゃどうだか、って感じですが
この市役所は自信を持って好きな存在です。
僕はこの市役所を、自分の町の名建築として
自信を持って誇れる存在のひとつだと思っています。

この市役所には人を惹きつけるものがあります。
ちょっと野暮ったいけど、力強いモダニズムの造形
そして長い時間が生み出した深い味わい
今じゃもうこんな建物、建てられません。





壁面にあるモザイクタイルによる壁画です。
抽象的な現代美術の作品ですが
僕はこれは踊っている人々だと思っています。
大地と、火と、水と、人々・・・
そこには「よろこび」があります。

青梅は芸術と文化の町でもあります。
日本画家の河合玉堂は戦時中青梅に疎開し
自然豊かな青梅の風景を描きました。
青梅駅前には今でも古い木造の商店が並び
レトロな街並みが残されています。





この市役所、耐震補強とかして何とか有効活用できないのかなぁ・・・
ロンドンには、古い発電所を再利用した美術館「テート・モダン」があります。
パリの「オルセー美術館」は旧オルセー駅舎の再利用ですね。
この市役所も、現代アートの美術館とかにしたら
結構カッコいいんじゃないかと思うんだけどなぁ・・・
でも、青梅はやっぱり田舎だし
「テート・モダン」や「オルセー美術館」の建物にはかなわないか・・・





結局、 隣の空き地でこの春から新市役所の工事がはじまりました。
新市役所が完成したのち、2010年頃に旧市役所は解体の予定だそうです。



建物が解体されるのはしょうがないことなのかもしれません。
今は、とりあえず最後の日まで
市役所を静かに見守っていきたいと思っています。

残された時間で
「彼」はどれだけ、自分のことを
僕に語ってくれるでしょうか。
今は、静かに耳を傾けて
「無言の箱」の声を聞き届けたいと思います・・・



2008.4.20

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