パレスサイドビル

日本におけるDOCOMOMO100選
日本の近代建築20選

所在地 東京都千代田区一ツ橋
竣工 1966年(昭和41年)
設計 林昌二
日建設計





あぁ・・・
やっぱ建築はやめられない・・・
こんなの見せつけられちゃったら
もうどうしようもないです・・・

今回は日本現代建築史上の至宝といわれる
名作・パレスサイドビルの登場です。





皇居(パレス)の隣(サイド)にあるから
その名も「パレスサイドビル」
どうです、名前からして何とも機能主義的(?)じゃありませんか〜
竣工以来これまでに多くの賞を受賞し
日本を代表するモダニズム建築の20選にも選定されている
まさに名作中の名作です。
毎日新聞社の本社としてもおなじみです。
上の写真の手前に写っている石橋が「竹橋」
隣には谷口吉郎設計の国立近代美術館があります。





かつてこの土地には
1951年に竣工した「リーダーズ・ダイジェスト東京支社」
というビルが立っていました。
戦前から日本で活躍していたチェコ人のモダニズム建築家
アントニン・レーモンドが設計したこのビルは
当時の日本建築界のレベルを超越した名作として
戦後間もない日本で高い評価を受けていました。
竣工した年に第3回日本建築学会賞を受賞しています。
どんなビルだったかというと・・・
建築史の教科書に当時の写真が載ってるんですが
国際文化会館を2階建てにしたような感じのデザインです(アバウトすぎる説明)。
かなりカッコいいモダニズム建築だったようです。

そのリーダーズ・ダイジェスト本社ビルが
耐震上の不安から1963年に解体されたあと
その跡地に建てられたのが、このパレスサイドビルでした。
かつての名作への畏敬の念か、それとも対決を試みたのか
因縁めいたその土地に新たな「名作」が姿を現したのは
1966年のことでした。





設計を担当したのは林昌二(1928〜)をリーダーとした日建設計のチーム
林先生はのちにこのように語っています。

  ・・・まことに心の痛む話でした。
  何しろあれは素晴らしい建築だと思っていましたし、
  その土地にかかわることになろうとは
  夢にも思っていませんでした。
       (中略)
  もちろんレーモンドさんにもご了解を得たんです。
  「レーモンドさんのリーダーズダイジェストの模型をつくってどっかへ置こう」
  という話もありましたが、
  レーモンドさんが「その必要はない」といわれたようです。
  しかし、ああいう名作を壊して次の建築をつくるのは
  非常に責任の重い話でした。・・・

『モダニズム建築の軌跡 60年代のアヴァンギャルド』
内井昭蔵監修 INAX出版(2000)

かつての名作と比べられるという重圧の中で生まれたのが
新たな名作・パレスサイドビルでした。





このビルのデザインの重要な要素となっているのが
ビルの中のサーキュレーション(人の流れ)です。
上の写真の中央に写っている白い円柱状の構造物
これが「垂直のサーキュレーション」の装置です。
その左右のガラス張りのビル本体の部分が
「水平のサーキュレーション」の装置となっています。
白い円柱は東西に2本あり
その間に幅200mにもなるビル本体が横たわっています。





これが白い円柱の中の写真
周りにズラリと並ぶドアはすべてエレベーターです。
中央部分には階段も見えます。
白い円柱は「人間を垂直方向に動かす」装置になっているのです。





一方こちらはビルの中心を貫くアーケード
東西の2本の円柱をつないでいます。
天井が( 天 井 が !! )フローリングになっていて
なかなかオシャレな雰囲気です。
写真の上下を間違えているわけではありません。
最近のビルと比べると天井の高さが低めで
心地いい安心感のある空間になっています。
この廊下が「人間を水平方向に動かす」装置になっています。





2階建てのアーケードには飲食店や書店など、様々なお店が並んでいます。
ちなみにここの「●クドナルド」の看板が
昔京都で見たような茶色っぽい色のものだったんですけど、何ででしょうね・・・
ビル内の景観に配慮しているのか・・・

このように人間の動きに合わせてデザインすることにより
明快で分かりやすい動線を持ったビルにすることができる上に
それぞれを「円柱」「直方体」という単純な幾何学立体で表現でき
その組み合わせが音楽のような美しいビルを生み出しています。



   

左はビルの東側エントランスに誇らしげに掲げられた立面図
このビルがいかに単純明快な構成になっているかがよくわかります。
右はこのビルの華々しい受賞歴を示す記念プレートたちです。



あぁ・・・どうやらこのページだけでは
このビルを語りつくせそうにないので
続きは2ページ目に書かせていただきます。
まだ話を聞いてくれるという心やさしいお方は
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パレスサイドビル 2ページ目

2008.6.29

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