世田谷区民会館 公会堂

所在地 東京都世田谷区世田谷
竣工 1959年(昭和34年)
設計 前川國男





これ、実物見るとホント感動します。
竣工から50年近くを経て今なお
峻厳な世界観で人々を魅了し続ける
「日本のル・コルビュジエ」とも言われた
モダニスト前川國男の中期の名作です。





世田谷区民会館

1950年代末から前川先生によって進められた
「世田谷区役所シリーズ」の最初の作品です。
最初の作品にして最高の名作と言えるかもしれません。
ホントにこの造形感覚には圧倒されるものがあります。





何といっても特徴的なのが
この独特のギザギザした躯体の造形
窓のないマッシブなコンクリートがドーンと立ちはだかる様は
まるで巨大なダムを見上げているようです。

この構造は「折板構造」と言って
柱を使わずに壁だけで屋根を支えることができるようになっています。
たとえば、紙はそのままではフニャフニャで立ちませんが
折り目をつけるとしっかりと立ち、しかも上に物を載せることもできます。
この原理を応用したのが「折板構造」です。
薄いコンクリートの壁だけで屋根を支えています。

この公会堂のほかにも、前川先生は同時期に
「福島県教育会館」(1956)でも折板構造を採用し
またアントニン・レーモンドも、彼の後期の代表作で
「ル・コルビュジエに放った折り鶴」とも称される
「群馬音楽センター」(1961)で折板構造の頂点を示す作品を残しています。



   

またやはり同じ時期、丹下健三は「国立代々木競技場」(1964、写真右)で
折板構造のカウンターパートに当たる「吊屋根構造」を世界に先駆けて実現し
さらにアメリカではエーロ・サーリネンが Flying Roof と呼ばれる
鳥が羽ばたくような屋根を持ったドームをいくつも設計、などなど・・・

これら一連の「構造表現主義」は
1950年代後半〜1960年代前半の建築を特徴づけるムーヴメントのひとつです。
力学的構造を大胆に表現したパワフルな建築が
この時代のスタジアムやオーディトリアム建築の分野で大きく発展しました。
その中でもこの世田谷区民会館は
都心で見ることのできる数少ない折板構造の作品です。





折板構造は壁全体で屋根の重さを支えるため
大きな窓を開けたりすることができません。
しかし、だからこそ非常に機密性のいい空間を作ることができるため
特にオーディトリアム建築の分野で折板構造は発展しました。
何より窓がないため、打ち放しのコンクリートだけを存分に味わうことができ
管理人としては「もうたまらん状態」なわけですよ。

ちなみにこの壁は内側から見ても
外と同様(というか外側と反対の折り目で)ギザギザになっています。
本当に壁だけで屋根を支えているのです。





こちらはホール部分の前にある「ホワイエ」の内部
ホワイエは折板構造ではなく、一般的な柱梁構造になっています。
(左右に大きな窓が開いているのがわかります)
コンクリートと赤じゅうたんという妙な取り合わせですが
なかなか華やかな雰囲気になっています。





絶妙なくねり具合の大階段は、世田谷区役所第一庁舎第二庁舎でも
同様のモチーフが繰り返されています。
モダニズムでありながら、機能性だけにとどまらず
豊かな空間体験をも意識した「前川美学」を反映しています。
ル・コルビュジエの作風を継承した「フランス流モダニズム」の作品です。





再び外に出て・・・
こちらはホワイエとは反対側の舞台側の外観
舞台側はシンプルな直方体型になっています。
下の方には搬入口や準備室などが付いています。





にしてもですよ!!
このコンクリートの美しいことと言ったら!!
最近の安藤忠雄先生とかの清楚なコンクリートとは一味違う
威圧的でブルータルな質感がもうtらまらんですよ!!
(感動してタイプミスするほどですよ)





コンクリートというものは
不思議と人を魅了するものがありますね・・・
このなんとも形容しがたい抽象的な質感・・・
もはや抽象芸術の域です。







<前川國男「世田谷区役所」>

世田谷区民会館 公民館
世田谷区役所 第一庁舎
世田谷区役所 第二庁舎

2008.8.29

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