世田谷区役所 第二庁舎
一連の「世田谷区役所シリーズ」の中でも 第三期、一番最後に計画されたこの第二庁舎は 第二期の第一庁舎との間に9年もの差があり 他の建物とはかなり異なった雰囲気を持っています。 この時期にはすでに前川先生は打ち放しコンクリートの作風を放棄し 代わって打ち込みタイルによる箱型の作風になっていたのですが この建物では他の建物との調和を図るために 他の建物に合わせて打ち放しコンクリートになっています。 他の建物がひとつの広場を取り囲むように立っているのに対し この第二庁舎だけは道路を挟んだ向かい側に立っています。 玄関部分の曲線的な造形の大きな庇は、同じく前川作品の 「京都会館」(1960)や「東京文化会館」(1961) 「紀伊国屋ビル」(1964)などにも共通のものが見られます。 前川先生が好んだ象徴的なモチーフです。 庇の下のコンクリートの梁の造形です。 とてつもなくいい色合いをしてます。 ちなみに前川先生が打ち放しコンクリートをやめたのは 「コンクリートは風化に耐えられない」からだそうで 1960年代後半ごろから前川先生の作風は 「年月とともに風合いが増す」タイル貼りの建物にシフトしていきました。 この作品を最後に、前川先生は打ち放しコンクリートの作品を 全く作らなくなりました。 今はコンクリートの上に透明の保護材が塗られています。 こちらも許可をいただいて中の写真を撮らせてもらいました。 他の建物よりも落ち着いた雰囲気なのは 照明や天井、壁面の色のせいでしょうか。 いい意味で「枯れた作風」という言葉が似合います。 何やら芸術チックなものも置かれています。 埋め込み型の天井の照明はやはり東京文化会館と同様。 作風の変化が感じられます。 1960年代前半の彫塑的な作風から一転して この時代には直方体を組み合わせた無機質な作風に変わっています。 「直方体にタイル」というのが後期前川作品の特徴ですが ここでは他の建物に合わせて打ち放しコンクリートの直方体になっています。 やっつけ仕事だなんて言ってはいけません。 それにしても、「直方体にタイル」の方は実にカッコいいのですが コンクリートだけの直方体ってのは・・・適当感が否めない・・・ 区民会館のコンクリートは美しいのに・・・何なんでしょうね・・・ いくらカレー好きでもルーばかりでは食べられないってことなのか・・・(意味不明) 陰影がつかないんですね、真っ平らだと。 躯体部分の造形も、力強い第一庁舎とは異なり 荒々しさがかなり和らげられています。 窓には耐震補強用の筋交いが付けられています。 もうちょっとデザインを損ねないようにできなかったのかなぁ・・・ 筋交いがなければ水平連窓がバチーッと並んでね・・・ 丘の下から見上げた第二庁舎の全体です。 第二庁舎には世田谷区議会の議場も入っているので 他の建物と比べると結構大規模な建物です。 本当に直方体そのままのデザインになっています。 そしてやはり筋交いが無造作に付けられています。 やっつけ仕事onやっつけ仕事だなんて言ってはいけません。 そう見えるのは他の建物がカッコよすぎるせいです。 <前川國男「世田谷区役所」> 世田谷区役所 第一庁舎 世田谷区民会館 公会堂 世田谷区民会館 公民館 2008.8.31
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