東京都庁 第二本庁舎

所在地 東京都新宿区西新宿
竣工 1991年(平成3年)
設計 丹下健三

写真一覧のページ





東京都庁の隣に立つこの階段状のデザインのビル
これもれっきとした「都庁」です
写真左側の「第一本庁舎」に対して
右側の階段ビルは「第二本庁舎」と言います。
第一本庁舎の弟分に当たる建築です。





インパクトの強い第一本庁舎に押されて
やや影の薄い存在ですが・・・
こいつもこいつでなかなかぶっ飛んだデザインですよね。
「隣にあいつがいなかったら・・・俺が東京のシンボルだったのに・・・」
という感じで、隣の兄貴を憎んでいたりして・・・
(管理人もよく妹から同様の苦情を言われます)

でも悲しいことに、この哀れな弟は
「兄貴の引き立て役」を運命づけられた存在なのです・・・
あぁそんな・・・





さて、この弟の第二本庁舎くん(以下「ルイージ」
父親は当然兄貴の第一本庁舎(以下「マリオ」)と同じで「帝王」丹下健三です。
マリオと同じで細部のデザインは凝りに凝っています。
窓のパターンの使い分けも兄貴のマリオとほぼ同様。類似してます。
部分だけのクローズアップではほとんど見分けがつきません。
それにしても、本当にこのデザインの細かさといったら・・・





そして全体の造形はというと・・・
最上部の45°ねじれたデザインはマリオと同様ですが
ルイージの方は三本の細いビルを階段型に並べたようなデザインになってます。
マリオといいルイージといい、パッと見で
ひとつのビルに見えないようなデザインになってるあたりが面白いです。
ちなみにビルの底面の広さはマリオもルイージもほぼ同じ
背の高さが違うだけです。



   

でもこの兄弟、決定的な違い(格差)があります。
左のマリオと右のルイージ
マリオにはあって、ルイージにはないものがあります。

それは・・・「軸線」です。
マリオにはちゃんと中心に軸線が通っていて
軸線を中心に完全な左右対称になっています。
一方、ルイージには・・・軸線がありません。
左右対称にもなっていません。

「お父ちゃん(丹下健三)!! お兄ちゃんには軸線があるのに
  どうして僕には軸線が無いの!?
  お父ちゃん左右対称が好きなんじゃなかったの!?」






父「それはな、息子よ・・・
  軸線は唯一絶対な存在だからだよ。
  軸線が2本存在しちゃいけないんだよ。
  軸線はお兄ちゃんにあげちゃったんだ。
  もうお前の分は無いんだよ。」


そうなのです。
完璧な左右対称には、唯一にして絶対的な軸線が必要。
軸線が2本あってはいけないのです・・・
軸線が2本あったら、対称性がぼやけてしまう・・・
完璧にして絶対な左右対称のためには、軸線はひとつでなければならないのです。

そのため、父親は非情にも、この罪のない弟を
あえて左右非対称にすることで、兄の左右対称を際立たせる
という方法を選んだのです。
あぁそんな・・・





以上は実は管理人の推測でしかないのですが
上の写真は都庁前の広場から見たルイージくん。
兄マリオに両手を広げるように伸びる空中回廊の外に追いやられ
いかにももの哀しげな表情でこちらを見つめています・・・
明らかに父親の愛情に偏りがあるというか・・・
・・・そんな目で見ないで・・・





広島ピースセンターといい、国立代々木競技場といい
何だか丹下先生の作品には、中心となる「主役」と、それを引き立たせる「脇役」
そしてそれらを取り巻く「舞台」の3点セットからなる作品が多い気がします。
都市計画の分野でも有名な丹下先生は
こういう大きなまとまりとして自分の作品を考えていたのかもしれません。
それがまた丹下作品の圧倒的な世界観の魅力というか・・・
その中で「主役」と「脇役」ができてしまうのは、しょうがないことなのか・・・

でもこの愛すべきルイージくん
一生懸命に、自分の存在感をアピールしています。
目立つ兄貴の方だけでなく、このかわいらしい弟の方にも
ちゃんと注目してあげてください。



写真一覧のページ

2008.12.26

一覧に戻る
地域別一覧に戻る
時代別一覧に戻る

inserted by FC2 system