国立代々木競技場
第二体育館

日本におけるDOCOMOMO100選
日本の近代建築20選

所在地 東京都渋谷区神南
竣工 1964年(昭和39年)
設計 丹下健三





東京オリンピックに合わせて建設された、国立代々木競技場。
メイン会場の第一体育館は世界的名作として有名ですが
その隣にある、この第二体育館もなかなかカッコいいんです。
というか、個人的にはこっちの方が好きだったりします。





設計はモチロン「帝王」丹下健三。
15000人収容の大きな第一体育館は競泳会場として
こちらの第二体育館はバスケットボール用の会場として建設されました。
構造は第一体育館と同じくケーブルによる吊屋根構造ですが
こちらはちょっと違うケーブルの使い方をしています。





第一体育館は「鞍型懸垂」と呼ばれるタイプ。
二本の支柱の間にケーブルを渡し、両端を固定する構造です。
一方のこちらは「シリンダー型懸垂」と呼ばれるタイプ。
支柱は一本だけで、その支柱の周りをぐるりとケーブルが回って
螺旋を描きながら地面に到達するような形になっています。

「シリンダー型懸垂」ではあまり広い内部空間はできませんが
その代り、非常に求心性の高い、シンボリックな内部空間をつくることができます。
天に向かって螺旋を描きながら上昇していく屋根の造形は圧巻です。
第一体育館以上に、強烈な上昇性を持っています。
ちなみにこの塔、第一体育館よりも第二体育館の方がちょっと高いんです。
第一体育館は40メートル、一方こちらは42メートルあります。





この塔の造形がね〜 実にイイですよね〜
第一体育館では様々な「見立て」が駆使されているわけですが
こちらはあまり「見立て」にはこだわらず
基本的なデザインは第一体育館に合わせておいて
あとはひたすら丹下先生の芸術的センスのままに突っ走っています。
天を突きさすようにビシーッと尖がっていて
しかも一方で抑えを利かすようにズンっと立ちはだかっている・・・
しかも微妙に曲線があって陰影がまた美しい・・・
この仕事、まさにアーティストですね〜 実にイイ・・・





で、この峻厳なデザインの塔の周りを
グルーンとフワーッとスカートのように取り囲む吊屋根。
シルエットがまた美しい!!
観客席部分の描くブーメラン曲線もまた絶妙・・・
もうこれひとつのオブジェでいいですね。アートです。芸術です。





第一体育館と同じく、こちらも観客席は
ブーメラン曲線を描いて大きく空中に張り出しています。
かなり高い位置に、かなり大きく張り出しています。
下から見るとUFOみたいで何だかカワイイです。
ちなみに窓はミラーガラスになっていて、空の青を映しています。

こうやって見るとね、ホントに
「丘に突っ込んだUFO」みたいな感じに見えますね・・・
不思議な雰囲気の建築です。





で、この吊屋根構造・・・
中から見たらどんななのか・・・
何とこの日は幸運にも、タダで中に入ることができました!!
世界を仰天させた吊屋根は、中から見るとこんな感じになっています・・・












・・・何とも神秘的な空間です。
螺旋型に絡み合うケーブルの隙間から
トップライトの日光が神秘的に降り注ぎます。
ちなみにケーブルの間は木材が貼られています。
本当に綺麗です・・・





大きくうねっている太いケーブルがメインケーブル
そこから左右に伸びている無数のケーブルが屋根を形成しています。
メインケーブルを円周方向に、放射状に引っ張ることによって
螺旋型の美しい屋根をつくり上げているのです。
ただため息が出るばかりです・・・
体育館というよりは教会のようです。

というのも、実は丹下先生自身クリスチャンで
もしかしたらこの光の使い方は
教会の中に降り注ぐ「神の象徴」としての光を
イメージしているのかもしれません。
この体育館はオリンピックの各国代表から絶賛されたそうで
アメリカの代表団のある選手は
「自分が死んだら、骨をこの体育館の塔の下に埋めてくれ」
と頼んだという逸話も残っているほどです。





観客席は中央のアリーナを囲んで
ぐるりと円形に広がっています。
階段席は結構急な角度・・・
で、天井からはこれまたUFOの編隊のような感じの
ドーナツ型のシャンデリア照明がぶら下がっています。
っていうかこれはどう見ても『未知との遭遇』ですね・・・





ちなみにこの日はレスリングの試合が行われていました。
「天皇杯 全日本レスリング選手権大会」という結構重要そうな試合でしたが
内容の方はサッパリわからず・・・
お客さんが真剣に試合を見ている中で、一人黙々と天井を撮ってました。
不審がられたかな・・・(日常茶飯事)
レスリング関係者の皆さん、ちゃんと見てなくてすいませんでした。





それにしてもホント
こいつはどこからどう見ても美しいです・・・
「美のカタマリ」というか何というか・・・
「帝王」丹下健三の実力を思い知らされます。
周りに邪魔なものが何もないっていうのが
また何とも気持ちいいんですね〜





何かとてつもないものに出会ってしまった感動があります。
こいつは何度となく見に行きましたが、何度見てもイイです・・・
こいつは建築ファンならずとも、芸術の心を持つ方は
一度出会っておいて損はない奴だと思います。



2008.12.24

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