研数学館

所在地 東京都千代田区西神田
竣工 1929年(昭和4年)
設計 不詳



東京は「過去」と「現在」が共存する街です。
古い建物もあれば、新しい建物もあったり・・・
そんな東京の多くの建築の中でも
今回の建築は一風変わっています。
ひとつの建物の中に
「過去」と「現在」が共存しているのです・・・





研数学館



カトリック神田教会のすぐそばにあるこの建物
大通りに面して立っています。
1929年に完成した古いビルです。

写真の手前と奥で全然違う表情を持っています。
奥(右側)はいかにも古そうな感じ
手前(左側)は真新しい雰囲気です。

「研数学館」はもともと
明治以来の長い歴史を持った予備校でした。
(日本初の予備校だそうです)
この建物はその校舎でしたが
「研数学館」は2000年に廃校となり
現在は理学研究者のバックアップを行う
財団法人になっています。
この建物も廃校のために改修され
今は居酒屋の「和民」が入ったりしています。





こちらが戦前のオリジナル部分。
当時流行した「ライト風」の建築です。
アメリカの建築家 フランク・ロイド・ライトの作風をまねたもので
この時代日本でとても流行しました。
流行に敏感なのがいかにも東京らしい感じです。
外壁は茶色いタイルが貼られていて
温かみのある表情をしています。





入口のゴツゴツした造形が特徴的です。
ライトの作風はまさにこんな感じです。
落ち着いた色調の茶色いタイルも
ライトが好んで使った素材です。





そしてこちらが改修された部分
古いタイルの上から派手に塗装がされていて
何とも適当で安っぽい感じです。
そして入口には大迫力の「和民」の看板が
ドカーンと無造作に掛かっています。
一番上の冠のような部分には
白くて丸い部分がありますが
昔はここに時計が付いていたのでしょう。
この建物がかつては予備校だったことを物語っています。

古い部分の上にペンキを塗って
新しいものを積み重ねていく・・・
東京という都市の「重層性」を象徴しているようです。





ひとつの建物の中に共存する
「過去」と「現在」・・・
東京という都市そのものを凝縮したような
無秩序の建築、研数学館でした。



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2008.4.20

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