第2スカイビル

所在地 東京都新宿区新宿
竣工 1968年(昭和43年)
設計 渡邊洋治

写真一覧のページ



代表作「軍艦マンション」で名高い
新宿アングラ系建築(?)の巨匠、渡邊洋治。
その作品はいずれも強烈で魅力的ですが
今では現存する作品の数はかなり少なくなってしまいました。
これは新宿に現存する貴重な渡邊作品のひとつです。





・・・って、あれ?
何だかこの作品は「強烈な個性」とは程遠いというか・・・
むしろかなりこざっぱりした感じというか・・・

でも、このビルも正真正銘、渡邊洋治の作品です。
名前は第2スカイビル
ちなみに、軍艦マンションことニュースカイビルは、旧称第3スカイビル
この作品は、あの軍艦マンションに先行する
「軍艦マンションの兄貴分」といえる作品なのです。



   

左が第2スカイビル、右が第3スカイビル(軍艦マンション)です。
第2スカイビルの竣工は1968年ですから、1970年の軍艦マンションに先行すること2年。
一見あの強烈な個性を放つ軍艦マンションと比べると
全くつながりのなさそうなサッパリとした建築ですが
実はこの作品にはすでに、2年後の軍艦マンションにつながる
基本的なコンセプトがほとんど盛り込まれています。





まず、この雁行したベランダの配置。
ベランダは同一平面上に並んでいるのではなく、少しずつずれて並んでいます。
上の写真では、右のベランダほど手前にせり出しているのがわかります。
このベランダはすべてほぼ南向きになっています。
別にこんな雁行した形にしなくても、採光性はほとんど差が出ないはずですが・・・
そこは渡邊洋治の譲れないこだわり(?)。
こうした採光性への注意(を言い訳にした立体的な造形)は
軍艦マンションにも継承されています。





そして・・・近くから見上げると見えないんですが
遠くからよく見えるこの「塔屋」の造形。
・・・これなんかちょっと
軍艦マンションを彷彿とさせるところがあると思いませんか・・・?
大砲型の貯水槽こそ付いていませんが、楕円形の本体に
なぜか付いている砲台のような突起物・・・
ちなみにこの塔屋の直下はらせん階段になっています。
この点も軍艦マンションとほぼ同じ。



   

それからこの側面の窓。
窓の列の部分だけなぜか壁が厚くなっていて
そこに正方形のこじんまりした窓が並んでいます。
この「正方形の小さな窓」も、軍艦マンションのユニットの窓と共通です。
右の写真のユニット部分に見られる四連続の正方形の窓と
左の写真の側面に並ぶ四連続の正方形の窓。
渡邊洋治が好んだ造形が両者に共通して見られます。

でも・・・軍艦マンションの最大の(建築的)特徴と言えば
何といっても「ユニット型マンション」というコンセプト。
ひとつの住居をひとつの「ユニット」としてまとめ
それを大量に積み上げて集合住宅を構成するという発想です。
ル・コルビュジエのユニテ・ダビタシオンの発想を継承した
渡邊洋治の機械論的集合住宅論の集大成ともいえるものです。





それと比べると・・・このマンションの場合は
確かにベランダはちょっとユニットっぽい感じはしますが
見た目が明らかに「ユニット」という感じでもありませんし
軍艦マンションほど機械的というか、即物的な造形でもないし・・・
外壁も鉄板じゃないし・・・

と思っていたら、実はそうでもありません。
渡邊洋治はこの作品ですでに、軍艦マンションで結実する
「ユニット型マンション」を予告するような表現をしています。
それは裏側に回ってみるとよくわかります・・・





おぉ〜っ!! すげぇ!!
裏から見るとちゃんとユニットっぽくなってる!!
これぞ渡邊洋治、しかも裏から見るとやっぱり軍艦っぽい!!
こっちは「軍艦マンション」より規模が小さいですから
さしずめ「巡洋艦マンション」ってところでしょうか・・・





裏の窓もやっぱり正方形です。
そしてこのやたら彫塑的で立体的な造形・・・
この作品はまだ構造自体は完全なユニット型ではありませんが
この造形は明らかにユニットを意識しています。
この時点で既に渡邊洋治の中で「ユニット型マンション」という発想が
かなりはっきりとした形になってきていたことを示しています。





そしてこの塔屋・・・やっぱり軍艦を彷彿とさせます。
これもやっぱり2年後の軍艦マンションにつながるアイデアと言えるでしょう。
この塔屋には左右に上下二段の砲台状のデッキが付いていますが
軍艦マンションではこの二段のデッキの間に大砲型の貯水槽が挟まるわけです。





このマンションの裏側には昭和っぽい街並みが雑然と並んでいますが・・・
それがまた渡邊作品のSF的な雰囲気と不思議な化学反応を起こして
まさに「新宿アングラ系建築」の名にふさわしいマンションになっています。
普段は建築カメラ小僧たる自分にとっては邪魔な敵である電線も
このマンションの場合は逆に引き立て役になっているよう・・・
こういう不思議な建築もいいと思いませんか?



<おまけ>

   

本文の写真では、全体が白く塗装されたビルになっていますが
実は元々あんなに真っ白だったわけではありません。
上の2枚の写真は2008年3月に撮影した第2スカイビル。
現在の白い塗装は2008年の改修工事の時に塗り替えられたもので
オリジナルは上の写真のように、南側がややくすんだクリーム色
裏側は茶色のツートーンカラーになっていました。
この改修工事、解体工事かと思ってヒヤヒヤしてましたが・・・残ってよかった・・・

後もう一点、他の写真と異なる点が・・・
・・・第2スカイビルの右隣にあった大きな銀行のビルが・・・

   

きれいさっぱり解体されてしまいました。
久しぶりに来てみたら、このあたり妙にさっぱりしたなと思ったら・・・
でもおかげで、今までよく見えなかった
第2スカイビルの側面部分が見えるようになったし・・・
・・・ま、いいか・・・
あ、隣の空き地はもう建設工事始まってますから
第2スカイビル、見に行くなら今ですよ!!
新宿駅から靖国通りを東にしばらく歩いてみてください。



写真一覧のページ

2009.7.30

一覧に戻る
地域別一覧に戻る
時代別一覧に戻る

inserted by FC2 system